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100周年「わたしと桂馬」フォトメッセージ




「わたしと桂馬」 御藤良彰様



 古里へ帰る時はいつも福山で新幹線を降りて山陽線の電車に乗り換えます。左側の座席に坐り海を見るのが楽しみだからです。 尾道大橋の下をくぐる辺りから左の車窓に海が見え、やがて千光寺山と港の全景が見えて尾道へ帰ってきた実感がしみじみと湧いてきます。 遠くに在りてこそ古里が一層懐しくなります。 就職のため尾道を離れて六十余年名古屋が第二の故郷なのですが何といっても生れ育ったのは尾道です。
 志賀直哉先生の「暗夜行路」の一節に紹介されている淨土宗光明寺という寺が私の実家です。 尾道の山の手の風景は百年二百年経っても殆んど変りませんので、私の脳裏には尾道の風景がそっくり刷り込まれています。
 尾道は瀬戸内の海によって天然の港と海の幸に恵まれました。そこから自然に尾道の宝である「桂馬の蒲鉾」が生れたといえましょう。 志賀直哉先生が愛好されたのも不思議なご縁です。
 昭和十年前後私が小学生の頃、母の使いで五銭玉十銭玉など小銭の入った蟇口を持って、境内の長い石段を駆け下り山陽線の踏切を 渡ると本通り、将棋の駒の看板がある桂馬の店は直ぐそこです。同じ土堂町ですもの近いのです。 牛蒡天、豆竹輪、梅焼、時にはちりめんじわの蒲鉾を買ったことを今でも忘れません。 但し、子供の使いですから箱入りのセットで買うのではなく一コ一コ何銭という時代の話です。 ガラス戸の立派な店の構えも商品の形、色、味も昔のまま、私にとっては桂馬の蒲鉾類は尾道を代表する味覚であると同時に、 桂馬の蒲鉾を食べて育ったといっても過言ではありません。
 処で桂馬の蒲鉾を食べるのに私は醤油をかけて食べることしか知りません。 山葵、生姜、辛子、レモンなど調味料か香辛料を加えれば味がもっと引き立つでしょうに、土産用の箱に加えて桂馬独特の出し汁が 付いていたらと願っております。
 その桂馬商店が今年創業百年を迎られたそうで心からお祝い申し上げます。 昔変らぬ尾道名物を百年も提供し続けてくださったこと真に有難うございました。 むしろ客の方からお礼申し上げます。 本店の裏隣りが魚市場で海岸通り、その立地条件の良い場所に店を構えられたことは敬服に値いします。 桂馬という駒は斜め前に跳ぶだけで後にはさがれません。 百年も続く店の繁昌は当然の結果でしょうがご先祖の功労を偲び今後も益々発展されることを祈る次第です。 草々



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